クマノミ語録  

 

 クマノミは言葉を話します。書くこともできます。物の名前はたくさん知っています。人の名前もすぐ覚えます。しかし、言葉がコミュニケーションの手段になっているかというと、難しい場合も多いのです。たとえば「ウルトラセブンの第○話に登場する怪獣は何ですか?」と聞くと即答します。弱点まで教えてくれます。しかし、「学校で図工の時間何を作りましたか?」とい質問になると言葉だけでは伝わりにくいのです。しかも、「怪獣を作りました」などありそうな答え(多くは自分の願望や思いついたことを答えます)をするので相手もだまされてしまいます。本人はウソをついたわけではないのですが、言葉を話すことが真実をわかりにくくしているのです。
 しかし、クマノミも自分の気持ちを言葉で表現しようとする時もあります。まるで片言の外国語を話すような感じですが、その表現力はとてもユニークで、まわりを楽しい気持ちにさせます。本人は必死だと思いますが。ここでは、クマノミのおもしろ語録を紹介します。

  

自宅にて

ある日クマノミは初めてかりん糖を食べました。おいしくて気に入ったらしく、翌日も食べたくなりましたが、名前がわかりません。ごそごそと探していましたが、私が理解できなかったので

「こげ茶色を下さい」

この頃クマノミは色に凝っていたので、色で表現したのです。

自宅にて

夏休みの朝です。サザナミヤッコが学校の水やり当番で出かけていきました。途中で急に雨が降ってきたので車で迎えに行こうとしましたが、クマノミはビデオを見ていて動きそうにありません。「ビデオを見ていますか?ママはでかけます。」と言うと「はい」と返事をしました。この頃は視覚支援もなかったので、この言葉は非常にあやふやなものだったのだと思います。彼にとってはビデオという言葉しか認識できていなかったのでしょう。すぐ帰るつもりで学校に出かけたり知り合いに出会い、ちょっと立ち話をして20分位して自宅に戻ると何故かクマノミは階段のところで同じアパートに住むサザナミヤッコの友達と遊んでいます。びっくりしていると友達のお母さんがやってきて「大丈夫ですか?」ととても心配そうな顔。私が出かけてから少したってクマノミは不安だったのか(いつも1時間以上見ているのですが )友達の家に行って

 「ママが倒れて死にました」

たぶん「ママがいなくて困った」と言いたかったんでしょうね。その時は朝とても早くてしかも突然の雨で出かけていったので部屋の中は荒れ放題。強盗が入ってつれていかれた現場と言ってもおかしくない状況だったのでお友達のお母さんはとてもびっくりしたと思います。クマノミとてもはっきりとした口調で言ったそうです。 

歯科にて

その日は大阪に来て初めて歯科治療をしました。エアーの出る器具を使うと

「毒の息をかけるな〜。」 

歯を削ると 

「サボテンはやめてくれ〜。」

歯科は嫌いなのですが、待合室で本を読むのと、帰りに本を買ってもらえるのが楽しみで、嫌がらずに通っています。でも治療が始まると少ないボキャブラリーの中で気持ちを表現します。

歯にまつわる話

歯が抜けると大騒ぎのクマノミ。初めて歯が抜けて血が出たときはびっくりして

バンドエイドを貼って下さい」

奥歯が抜け替わる時、グラグラする感覚が嫌で

「首が取れるー。」

グラグラしていた歯を抜いてもらいに歯科に行くとき、母が抜こうとすると

「歯医者でします。」

と言っていたのに、予想外に3本も抜く事になり

「歯が3本溶岩に落ちる」

「溶岩なんてどこにあるの?」

「溶岩屋」

歯が抜けると言うことはとてもショックなんですね。歯医者を嫌がりながら、歯に関してはやっぱり歯科に解決して欲しいようです。白衣を嫌がる子が多いようですが、クマノミの場合は専門家しか信用しないので白衣を着ている人には従います。

自宅にて

夜寝る前、クマノミはハンマーヘッドと戦いごっこをします。何故か冬の間はそれほどこだわらないのに、暖かくなると戦いのシーズンに突入です。でもすごく戦いたいのに眠い時もあります。でもパパは倒さなくてはいけないので

「パパは仮死状態」

と言ってふとんをかぶって寝てしまいました。


これはすごく便利な言葉だと思い、ハンマーヘッドはその後自分から
仮死状態になろうとしましたが、それは許されませんでした。

自宅にて

最近のクマノミは相手の状態を見て行動するようになりました。戦いごっこも休日でハンマーヘッドが一日中居るときは手抜きをすると怒ります。しかし、会社から帰って疲れているような時は、手抜きでも我慢してくれます。

その日はハンマーヘッドがとても疲れていて戦えない状況だったので、モンガラカワハギが

「今日パパは疲れているから肩車だけで戦いはなしです。」と言うと

「へろへろおやじ〜。」

と言って肩車で2階に上がったとたん、ふとんにもぐって寝てしまいました。

ハンマーヘッドはこの日確かにヘロヘロおやじでした。

車の中で

クマノミは目が悪いはずなのに(弱めのメガネをかけています)車の中からも自分の行きたい場所の看板を見つけるのが得意です。ビデオ店の前で
信号待ちになったりするとさあ大変。

「裏道に入る。ピッ。(ボタンを押す音)」

クマノミは「ピッ」と言ってボタンを押せば自分の思いが叶うと思っています。自分の思っていいる事は相手も同じように思っているという自閉症特有の感じ方をしているので、ひどい時は「ピッ」ひと言ですべてをすませようとします。しかも、どんなに家から遠いビデオでも、ビデオを借りようとします。

自宅で

クマノミはすごい偏食がありますが、好きなものはほっておくといくつでも
食べてしまいます。食べすぎの時は「これで最後だよ」「○つ食べたら終り 
です」と言って食べ物を手渡しています。ある日スーパーでパックになった8本入りヤクルトを買ってきて冷蔵庫に入れておいたら、私が別の部屋に行っている間に冷蔵庫から出して全部飲んでしまいました。私が戻ってきて

「全部飲んじゃったの?」

「8つ飲んだら終わりです」

たしかに8つ飲んだらもうないから終わりですよね。

自宅で

 最近、顔にカビ取りハイターがついて、顔面が腫れスモモ顔になったクマノミ。すごく気にしていたので嫌な体験だと思ったら、痛みが無かったせいかあれはプチ変身だったようです。
 何故なら寝る前の戦いタイムの時、自ら

「クマノミがデブ顔になる!ピッ!」

顔が腫れたという表現を知らないクマノミ、あの顔はデブ顔だったのですね。もうニ度とあの顔にはなって欲しくないんだけれど、本人は気に
入ってたのかなあ?

キャンプの作文

 4年の夏に養護学級のキャンプに行った時の作文です。クマノミはほっとおけばモンスターワールドに入って自分の好きなことばかり書いてしまいます。先生が「こんなことがあったよね。」とヒントを与えるとそのまま書いてしまいます。でも、時々本心がちらっと見えることがあるので、その部分を抜粋します。

 次の日、北千里プールに入った。大きいプールに入った。おおきな音がでると「たすけて!!」といいました。プールから出たら落ちると命をおとす。

 

 休憩を知らせる音は予測していなかったのでクマノミをとても不安にさせたようです。学校ではチャイムが鳴ったら終了と納得していますが、途中で
休憩になりまた入水するというのはわかりにくかったようです。実際パニック切りになり、水着のまま宿舎に戻ることも納得いかず、(服に着替えれば替えができたのに)裸で逃げ回って大変だったようです。

ランドセル

 4年生になった時、ランドセルを買いました。長野では学校指定の布製だったのでクマノミより私が欲しかったのです。クマノミも家に帰ったらすぐにしょって嬉しそうだったのに、作文を読んでみると

 ともだちがランドセルを見て「ランドセルをはじめましょう」と言った。
てんかもちをかうなら、ゼンマイロボットをかうなら、怪獣人形をかうなら、ぼくのランドセルをかい、今どは大ばくはつをおこし、ゲームオーバー。レオンは84のダメージを受けた。

 

クマノミはランドセルを買うならおもちゃを買ってくれーと言いたかったんだと思います。

雨が降ると

 雨が降るとどうなるかを問う問題です。
 雨が降ると、水たまりができます。などの例文があります。しかし、クマノミの答えは

 雨が降ると
    どうろに風がビュービューふく。 ←結構まとも

    ウルトラマンのかさをさして歩きます。←先生にヒントもらったな。

    かみなりが床をちぎった。←なんとなくわかる。

    こっかいぎじどうにぬめりがでる。←国会議事堂知ってんの?

    台風がでるのじゃん。←横浜生まれじゃないのに?

    バッファローの声が雨でとびちる。←どこで聞いたんじゃ!!

 なかなかの詩人でしょ。自閉症の人は想像力がないというけれど、クマノミの場合は普通の人が想像できないような別の世界があるのかなあ。  

遠足、奈良へ

 5月1日(これかいてるのが2日なんで昨日です)5年生の春の遠足で奈良に行ってきました。雨で一度流れた後、晴天に恵まれとてもご機嫌で出かけました。今日書いてきた作文が最高だったので、誤字もありますが、原文そのままで載せます。

 5月1日には、ならへえんそくに行きました。金剛力士像の首は、サンタは恐竜の首を、切ると、オレの剣がおられた!!チェンジ!!スイッチオン!!1,2,3!!
登場しても、えっ?クマノミは、キカイダーに変身!!金剛力士像が倒れている!!ピ〜ンチ!!鹿せんべいの研きゅうを失って倒れるときは、岩面蒼白になって画面の下に消える。大仏ロボット。アカ地雷ガマ、現る。
ダブルチョップだ!!大車輪投げ!!電磁ブレーク!!あ゛!!

  

本名以外は漢字、ひらがなも原文通りに書いています。自分の興味あ漢字は難しくても書けるんですね。岩面蒼白って顔面蒼白の事だと思うけど、この字でもおもしろい。最後のあ゛ってなんだ!!奈良に行ったことがわかる作文でしょ。
 行く前から金剛力士像との対決を楽しみにしていたクマノミ。出会った時にはにやっとしたそうです。

自宅にて

 まだ長野に住んでいた頃のお話です。(突然思い出した)その日はモンガラカワハギがクマノミのクラスの懇親会で夜お出かけの予定でした。そろそろ出かけようとソワソワしていると、クマノミはそれを察したらしく不機嫌。クマノミ様の夕食も作っていたのですが、気に入らず文句をつけてきました。

 「チキンを食べる」
 「えっ!今日はうどんだよ」
 

 怒ったクマノミ 

 「えげつないチキンを下さい!」

 クマノミは五味太郎の「言葉の図鑑」が好きでいつも見ていたので
意味はよくわからなくても単語は知っています。時々びっくりするような単語を使います。それがなんとなくその場にあっていたりするのでおかしいのです。それにしても「えげつないチキン」想像してみてください。 

発達検査

  久々に発達検査をしました。K式というものです。今までに何度かやっているので新鮮味がないらしく、あまりやるきがありません。以前できたものでも、ふざけてわざと間違えたりしています。一番の苦手は言葉゜での質問。「雨が降ったらどうする?」「おなかがすいたらどうする?」などです。クマノミは先生の質問を無視してなかなか返事をしなかったようです。何問かの質問の後クマノミはこう言ったそうです。

  「多くは語らない」

   通訳すれば「もう答えたくない」という意味なんでしょうね。でもさすがクマノミ、渋い。

父の立場

 夜寝る時、クマノミは心細くなるようで誰か隣に居て欲しいようです。
 父でもいいのですが、できれば母の方が良いようです。その日は父との
 戦いごっこが終了して仲良く布団に入っていました。そこへ母登場。

 「誰と一緒に寝ますか?」

 「ママ」

 「それじゃあ、パパはどこで寝るの?」

 「墓場」

  父は毎晩戦いごっこしてくれているのに、眠るとなるとお払い箱。
  しかし、墓場とは情け無用な〜。 

悪口

 普通の子供だったら、母にむかつく事があったら「ママのばかー、大嫌い!!」なんて言うんでしょうね。クマノミの場合

 「ママは真っ赤に焼けた鉄の棒が頭に刺さった状態!!」

  すごく具体的で恐ろしい。またまた情け無用。 

台風

  台風で休校になりました。楽ちんな方にの変更はOKのクマノミ君はラッキーって感じで上機嫌!!しかし、台風が去った後

  「台風が去ったから、明日は学校行くよ」

  「台風再びー」

  

  超能力者かあ〜 

お風呂にて

  入浴中、顔を泡だらけにして洗顔している母に向かって

  「無駄な抵抗はやめろ」

   偶然だと信じたい

プールの後

  プールから出て帰る時の事です。耳に水が入って気持ち悪いので
耳栓をする前に耳の水を拭いてくれと要求してきました。

  「耳に沼地がくっついた」

 

  そんなに気持ち悪いの??  

地震だあ〜

  震度4の地震です。クマノミは驚いて一言

  「天地が轟き、砕け散った」

 

  予言者だったのか?  

夜食

  夜になっておなかがすいたクマノミ

  「6Pチーズ」

  と言うのですが、なかったのでスライスチーズを出すと

  「お皿」

  お皿を出すと

  「焼きたてのパンを・・・・。」

   

  さすが王子様だわ。 

         

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